momoko-mの詩のあるところ

「南風桃子ブログ」の詩の部分をこちらでやってみようと思いました。

達治さんへ

あなたのみた

みてらの春は

もう すぎゆきたでしょうか

 

ルンビニ幼稚園のある

佐伯のお寺は

梅の香と ののさまと

ねむったふりをするお昼寝の時間と

マヨネーズの水でっぽうと

五歳のわたし

 

りんりんと乳母車を押してもらう達治さん

わたしは母に手をひかれ

鉄砲町の白いさざんかのふりしきる路を―――

猩々(しょうじょう)

わたしは

踊り続けます

赤いさかずきをもって

くるくるっとな。

くるくるっと祭囃子に合わせてな。

 

めまいのするよな 拍の乱舞の乱反射

ほうれ、わたしと目が合ったこどもが

今年も泣いておるわ。

 

さくら はらはら

びみょうなきぶん。

こまったような、うれしいような 。

それでも踊り続けます

くるくるっとな。

 

おとなに神輿をかつがれ、こどもに泣かれる

このびみょうな存在感がわたしそのもの。

 でも、もういいや

わたしは、わたしだもの

 

ことしも佐伯に春がやってきて、

そしてまた遠ざかっていく

わたしも踊りながら遠ざかっていく

桃太郎

石橋をたたきながらビクビク渡ってると

石が割れちゃってまっさかさま。

用心しすぎたオレの一生を一瞬のうちにふり返る

そこに、なんということでしょう

どんぶらこっこどんぶらこ、と素敵なオノマトペ

川上から流れてきたデカい桃の上に落ち九死に一生

くだけちった桃の果肉の中から、

オレは生まれ変わった気持ちになって立ち上がったんだ。

 

こうしてせっかく助かったのに

川下で桃を待ち構えていたジジババに激しくどやされる。 

今から桃太郎をつかまえるところだったのに予定調和をくずしおって。

こうなったらお前に桃太郎になってもらってこの村で一生働いてもらうよ

 

何か ふにおちない

なんだか やるせない

何かな なんだかな

 

こうして予期せず桃太郎の冒険が始まる。

「鬼が島」のような危険地帯にも派遣されるよう

村の条例であっさり決められる

田吾作と念仏とわたし

向こうから クワをかついだ田吾作が

わたしのほうに近づいてくる

田吾作のことは好きでもなければキライでもない。

そっと私の耳に顔をよせて

 

「ナムアミダブツ…」

 

このベタな展開に

「わたしを甘く見るんじゃない」

とケリを食らわせるか(いや…暴力はよくないな)

涼しい顔して

「ん、念仏?知らんがな」

と、ことわざ通りの予定調和を演じるか

ああ、どうすれば…どうすればいいのか

空をあおぎ 悩んでいるうちに

田吾作は遠ざかっていく。

田吾作からただの馬だと思われるのが

わたしはすこし、くやしい。

 

わたしのちいさなくつしたに 

穴が 

ぽかっとあきました。

5才のわたしはそれを指さし

おかあさんをみあげて泣きました

 

穴がどこかとんでもないところに通じているようで

 

いま、わたしは

いろんなところに少々穴があいててもヘーキです。

空には風が わたっていきます